メガネフレームの話
1 メガネフレームとは
メガネは、メガネフレームとメガネレンズとで構成されているのですが、一般的にメガネといえば、メガネフレームの
ことを指していると思います。
そのメガネフレームは、眼鏡として正しく機能するために大切な役割を担っています。
正しいメガネフレームの基本的な条件を挙げると、下記のようになります。
(1)レンズを処方通りの位置に合わせて、しっかり固定できること。
(2)正しい位置に不快感なく、しかも長時間装用できること。
(3)軽くて丈夫で耐食性に優れ、なるべく視野が広いこと。
(4)ファッション性があり、掛けることが楽しいものであること。
(1)と(2)の条件を満たすには、丈夫さと強さに加え、柔軟性、弾力性、調整のしやすさ、さらに顔に圧迫感を与え
ないこと、などが必要です。
(3)の条件では、軽さや視野の広さに加え、長時間及び長期間の使用に耐え得る丈夫さや、耐薬品性などが求め
られます。
(4)の条件はデザイン力です。
これら4つの条件が揃ってはじめて、良いメガネフレームといえるのです。
2 メガネフレームの素材
(1)メタル(金属)素材
● チタン
比重4.5で、対比重抗張力=26.4。洋白の2倍以上の強度を有する、軽くて丈夫な金属の代表格。
耐食性にも優れ、強い金属として、メタルフレームの主力素材になっている。
● βチタン(合金)
チタン74%、バナジウム22%、アルミニウム4%の合金。
引っ張り強度、バネ性に優れ、主にテンプル(腕)の素材として使用される。陽極酸化により、彩やか
なカラーリングも可能。
● NT合金
チタン44〜47%、ニッケル53〜56%の合金。
形状を記憶させることができ、ゴムのような超弾性をもつ、形状記憶合金と同様の特性を有する金属。
耐食性に優れ、金属疲労に対しても強い特徴をもつ。
● 洋白
銅64%、ニッケル18%、亜鉛18%の合金。比重は8.5。
ニッケルを18%加えることにより、真鍮(銅と亜鉛の合金)の色が黄色から白色になる。
さらに強度や耐食性も、真鍮より優れたものになる。
● ハイニッケル合金
ニッケル80〜85%、クロム10%、その他銅、鉄、スズを加えた合金で、比重は8.8でやや重い。
チタンが実用化されるまでは、金属性メガネフレーム素材の主役であった。
銀を少量加えることで切削性が向上。
● ベリリウム銅
銅98%、ベリリウム2%の黄色合金。
鋳造も可能な金属で、プレス加工できない複雑な形の部品等に用いられる。
● モネル
ニッケル65〜70%、銅30〜35%の合金。
白色で耐食性、強度、加工性に優れているので、細くて力のかかるリム(レンズを支えるところ)材等
に使用される。
● 金(GOLD)
黄金に輝く貴金属の王様。比重は19.3。
純金のままでは柔らか過ぎてメガネフレームに不向きのため、18金や14金にして使用する。
金は、銀、銅、ニッケル、パラジウムなどと合金にして使用され、金の含有量が75%のものを18金、
58.3%のものを14金とよんでいる。
また加える金属のことを俗に割金(わりがね)といい、その比率により色調や硬度が変化する。
銅が多くなれば赤味が増し、銀やニッケルなどが多ければ白色(白金ではない)に近く見える。
最近はピンク色に見えるピンクゴールドや、茶系色に見えるセピアゴールドも商品化されている。
(2)プラスチック素材
● アセテート
比重は1.23〜1.34とやや軽く、セルロイドの長所である強靭さや、精度、加工性にも優れている。
さらに原材料として、セルロイドの硝酸繊維素の代わりに、酢酸繊維素を使用することで難燃化に
成功した。
かわりに吸湿性が多くなったため、寸法精度ではセルロイドに劣るが、プラスチックメガネフレーム
の主力素材として多く用いられている。
● セルロイド
比重は1.35。衝撃に強く吸湿性が少ない。また装用感が良く、着色性、加工性にも優れている。
しかし60℃で軟化、180℃で発火するなど易燃性であるため、プラスチックメガネフレームの主役は
アセテートに譲っている。
● プロピオネート
アセテートの欠点を補うために開発された素材で、原材料にプロピオン酸繊維素を使い、耐衝撃性、
吸湿性、成形性においてアセテートより優れているが、強度はやや劣る。
主にモダン(耳の後ろで頭部を押えるパーツ)の材料として用いられる。 比重は1.2。
● エポキシ樹脂(オプチル)
比重が1.16〜1.5で、アセテートに比べ30%程軽い。
丈夫で細身のフレームでも型くずれせず、優れた弾力性を保つ。また特殊なコーティング膜で覆わ
れていて、汗などで表面が侵される心配が少ない。さらに耐熱性にも優れ、復元せいが大きい。
● べっ甲
タイマイ(赤道近海に生息するウミガメの一種)の甲羅を特殊な方法でつなぎ合わせたもの。
プラスチックではなく動物性素材のため、肌になじみやすく、しかもとても軽いので装用感がとても良い。
可塑性(歪むこと)も弾力性も少ないので、型くずれしにくく、長期間快適に使用することができる。
ただし乾燥に弱く湿度が10%以下になったり、また超音波洗浄器やお湯で洗浄したりすると、ひび
割れが生じやすい。